16 December 2009

The Text of Modern HENRER -verse 7-

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「ヘンラー通信 extended remix」
あきもとキンぢ



「ヘンラー通信extended remix」は、2005年8~9月にかけて四国を遍路した際の路上生活旅の記録を、友人知人に向けて一方的に送りつけたケータイメール版オレ専用スパム媒体「ヘンラー通信」を改変したリミックスヴァージョンです。



真実は路上にある。
路上とは宇宙である。
by オレ


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verse 7

 四万十のドライブイン「水車」。敷地にあるちょっと小高くなった芝地に3張りのテント。オレらはロウソクの灯りのもとに集まり、互いのことを語り合っていた。

 ドレッドの男は名前をラムサと言った。アンゴラとスイスのハーフで、スイスでは気功を扱うヒーラーをやっているそうだ。口にタバコをくわえながら教えてくれた。ヒーラーでタバコってどうなのよとツッコンでみると、親指と人差し指でつくった輪の中に一本のタバコを通し、コレで毒素は抜けたから大丈夫だと胸を張る。キコウはキコウでも、奇行のほうのようだ。だいぶ怪しいヒーラーである。
 
 一方のリアル・ヘンラーはこのとき56歳。自分を「乞食坊主」だと言った。何がキッカケだったのかは敢えて聞かなかったが、四国をひたすらグルグルとまわり、このときがヘンロ73週目。ヘンロ旅を続ける中で、どこかの寺から「香水」という戒名をもらったという。

 あの長いトンネルの手前で、くたびれた自転車の荷台に人生のすべてを積み込んで押しながら歩く香水さんの姿を見つけたラムサは、「彼こそ自分の探していたマスターだ」と直感したらしい。日本語がまったく話せないラムサと、英語がまったくわからない香水さん。2人はまさしく言語を超越した関係だった。

 なわけで通常ではあり得ない展開なのだが、このオレ様が2人の会話を通訳してやることになった。ちなみにオレの英語はブロークンを通り越して、むしろニセ英語である。

 ラムサは、香水さんを最初に見たときにインスピレーションでお気に入りのインセンスを渡したいと思ったと言う。香水さんにそれを伝えながら、オレはラムサに、彼の名前にある「香」というのはまさに「インセンス」という意味なんだぜ、と教えてやった。

 するとオーマイガーッシュとばかりに、ラムサは自分と香水さんとの間に起きたシンクロにいたく感動した様子。そして真剣な眼差しで語るのだ。「オレはこのマスターについて行く!」と。
「ところでキンぢ、彼にもうひとつ、ぜひ聞いて欲しいことがある」
 ラムサは続ける。
「天狗には、どこに行ったら会えるんだい?」


 やはり奇行師だった。

 「水車」をあとにしたとき、オレは再びひとりに戻っていた。香水さんとはまだまだ話したい気もしたが、またどこかで会うこともあるだろう。ラムサは香水さんと一緒に行くと言ってるが、どこまで本気やら。テントのないホリたちは撤収に時間がかからないため、早々に発ったらしい。ホリと連れは実は昨夜の時点で、一足先に38番・金剛福寺を攻めた後、同じ道を引き返してこの「水車」に戻ってきていたところだった。そのルートが次の39番札所への最短となるのだ。だからこれから38番へ向かうオレとは次の目的地が異なる。オレは一度進んだ道をまた引き返すことに抵抗を覚えるため、38番から39番へは遠回りしていくつもりだから、距離からしてホリより2日分は余計に歩くことになる。これで、もうヤツに会うこともないだろう。

 「水車」以降、オレは1日の移動距離40kmのK点超えを3日間続け、一気に愛媛県内へと進んだ。歩きはじめてからの移動距離はすでに600km以上。その間に季節もゆるやかに変化しており、目を覚ました瞬間の体感温度が以前より少し涼しく感じられるようになった、ある朝のことだ。

 テントから出たオレはふと思った。どこか大きな街に出たら、シュラフを買おう。夏なので携行していなかったのだ。しかしバックパックに荷物を詰め込んでいるうちに、まだまだ残暑が続いていることを思い知らされ、そんなことは忘れてしまっていた。
 その日の昼近く。40番・観自在寺がある愛南町の路上でチャリンコに乗ったヘンラーのオッチャンとすれ違う。「こんちは~」と、いつものごとく挨拶すると、「兄さん、寝袋持ってる?」とオッチャンがやにわに尋ねてきた。
「持ってないんすよ」
「じゃあ、コレあげる」
 あ。朝、買おうと思ったんだった。

 宇和島では市街に入る前あたりから、雲行きが怪しくなっていた。確実に降る。先に避難しておくべきか。様子を見ながら歩き続けるか。オレは後者を選び、宇和島の巨大アーケード街まで一気に攻めることにした。
 アーケードに入ったまさにその瞬間、猛烈な勢いで雨が路面をたたきはじめる。完璧なタイミングじゃん。そうだ、高知での休息中に軽く観光していたときも、こんな感じだったな。台風で外は雨だというのに、オレが出かける先だけはモーゼの十戒よろしく雲が割れ、あまつさえ青空まで覗き、濡れることはなかった。


 もしや天気、操ってね? オレ。

 ちゃんと“真実の”時間の上にいま、乗っかているんだ。シンクロが濃密に加速していくのを感じていた。




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NEXT・・・・・




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