16 December 2009

The Text of Modern HENRER -verse 6-

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「ヘンラー通信 extended remix」
あきもとキンぢ



「ヘンラー通信extended remix」は、2005年8~9月にかけて四国を遍路した際の路上生活旅の記録を、友人知人に向けて一方的に送りつけたケータイメール版オレ専用スパム媒体「ヘンラー通信」を改変したリミックスヴァージョンです。



真実は路上にある。
路上とは宇宙である。
by オレ


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verse 6

 路上生活に時計はいらない。日の出とともに起き、太陽の角度で「とき」を測り、月の形と位置で日数の経過を知る。「とき」とは自然や宇宙そのものだ。

 考えてみれば、この全宇宙には“もともとあるもの”と“あとからつくり出されたもの”の2種類しかない。ならば「とき」はあきらかに前者であり、自然の側に属するものである。自然はいくつものサイクルあるいは法則が有機的に結びついて、ひとつの全体を形づくっているが、だとすれば「とき」もまたそれを形成する法則のひとつということにならないだろうか。


 自然という巨大な輪の“ある地点”で人間が何かすることによって、一見何の関係もなさそうなところにいる別の生物が絶滅するといった現象が起こるのは、ひとつの法則にもとづいた事実である。「とき」についても、同じことが言えるんじゃないか。
 時間という巨大な輪の“ある地点”でオレが何かをすることによって、一見何の関係もなさそうなところにいる別のヤツに何らかの現象が起こる。これがシンクロニシティの基本的な原理なんだと、オレは思う。
 まるで必然的に起こったかのような偶然を経験すると、オレらはそれをとてもパラノーマルで神秘的で重要な出来事だと考え、興奮したり、嬉しくなったりするが、実はシンクロというのは起こるのが当たり前の自然現象であり、時間が本来もつ「法則」なのだ。

 それはいたるところで日常的に起こっているのだけれど、そのように日常的に発生している事象の多くは自分に直接的に関わっていないために、気付かないだけなのかもしれない。時計の針が示す角度やデジタル表示される数値の変化量こそが時間だと錯覚している現代型の暮らしの中にどっぷり浸かっているから、見えていないだけなんじゃないだろうか。
 しかし自然や宇宙のいとなみから直接的に「とき」を読むような日々の中にいると、それは当たり前の事象となり、シンクロを実体験として拾いやすくなる。

 そんなことを考えながらオレは高知市街を抜け、海沿いの国道をひたすら歩き続けていた。高知県内のヘンロルートは札所と札所の間の距離がやたらに長いところが多く、歩き好きにはたまらない。すっかり“歩くホリック”になっていたオレは歩行距離が長ければ長いほど楽しく、とりわけ高知での移動中はつねにハイになっている有様だった。

 圧巻は、高知市街から55kmほど移動した場所に位置する36番・青龍寺(しょうりゅうじ)から37番・岩本寺までの約70kmと、そこからさらに80km先の足摺岬にある38番・金剛福寺へと至る計約150kmの道のり。歩けども歩けども次のポイントである寺にたどり着かず、ヘンロ旅をこのルートの途上で断念する者も少なくないというが、いや、むしろ楽しい。オレ的には、とてつもなく。何といっても歩行距離が長いほど、ランナーズハイよろしく“ヘンラーズハイ”を大量に得ることができるのだから、たまらない。脳内でエンドルフィンが過剰分泌され、オピウムを摂取したときと同様な至福状態が続くのだ。

 疲労の臨界点の向こう側にある至福感を身体中にほとばしらせ、最初の70kmを台風を避けながら2日で移動。続いて休む間もなく足摺の金剛福寺を目指す。

 日中の猛暑で、いまにもメルトダウンしそうな国道56号のアスファルト。左手に広がる太平洋。暖かい黒潮の影響か、独特の南国感を漂わせる高知の風土は何ともジャマイカンだ。そういえばジャマイカの国土は四国をちょうどひとまわり小さくしたぐらいだという話を聞いたことがある。島の中央部を覆う山々が海の近くまで迫っている地形もよく似ている。なんて知ったかしちゃったけれど、実際のところカリブはあるものの、ジャマイカにはありません、行ったこと。とはいえ高知の中でもとくに南のほうの海の透明度なんかは、確かにカリブ海を思わせるものがある。珊瑚も見られるしね。あとはラスタマンさえいれば完璧だ。

 37番・岩本寺から50kmほど移動すると、いよいよ四万十川だ。渡し舟で川をわたり、続く国道の長いトンネルを抜けたところに「水車」という小さなドライブインがある。ヘンラーの間では「トイレも完備したキレイな」野宿ポイントとしてメジャーなスポットだ。オレも「水車」でビバークする予定でいた。
 
 トンネル内ではちょっとした音にもリバーブが激しくかかり、後方から迫り来る軽自動車の走行音がダンプカーの爆音に聞こえて、せっかくのハイな気分を一気に落としてくれるのだが、「キレイな」スポットで快適に野宿するには、そのような中を1.5km以上も歩かなくてはならなかった。
 トンネルを抜けたとき、日はすでに山の向こうに暮れ、暗くなりはじめていた。「水車」にはよく見ると先客が2人ほどいるらしく、テントを設営している姿がシルエットで浮かんでいる。

「こんちは。僕も野宿させてもらっていいスか」と声をかけたオレは、彼らの姿を見てすっかり興奮してしまった。
 なぜなら2人のうち一方の男はガイジンで、肩まで伸びた髪はドレッドに束ねられていたからだ。おおっ、ラスタマン! 思っていた矢先のラスタマン!! しかももう一方の日本人は、今回がヘンロ73週目(!)というリアル・ヘンラーじゃないですかっ!!!! 
「ジャーラスタファーライ、ラーダマーシー、ナフリスペクト!」
 心の中で、知っている限りのパトワを絶叫していたのは言うまでもない。

 3人そろってテントを設営していると、あとからさらに2人のヘンラーがやってきた。すでにあたりは真っ暗だったが、1人はどこかで見たシルエットである。そいつが話しかけてきた。

「キンぢさんじゃないですか~!」

 お~~~~~~~~~~~~~~~~っ、ホリじゃんかぁ! 中華のコックでデブの!! 実はオレは高知市街でまるまる3日間の休息をとっていたのだが、どうやらその間にヤツが一気に歩を進めたらしい。足のマメは完治しているようで、はつらつと元気そうだ。カラダも以前会ったときより、だいぶシャープになっている。
「10kg痩せました」
 ヘンロダイエット。効果は絶大のようだ。それにしても、これだけの人数のヘンラーで野宿するのは初めてである。情報通のホリもいるし、これより先のルートや野宿スポットについていろいろ情報交換できるのはありがたい。いやそれ以上に、5人とはいえ久々の大人数にワクワクする。

いつもよりちょっとだけ賑やかな四万十での野宿。灯りはほとんどなく、真っ暗闇に包まれた山間のドライブイン。天にかかる河は確かに神秘的だった。


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