The Text of Modern HENRER -verse 5-
「ヘンラー通信 extended remix」
あきもとキンぢ作
「ヘンラー通信extended remix」は、2005年8~9月にかけて四国を遍路した際の路上生活旅の記録を、友人知人に向けて一方的に送りつけたケータイメール版オレ専用スパム媒体「ヘンラー通信」を改変したリミックスヴァージョンです。
真実は路上にある。
路上とは宇宙である。
by オレ
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verse 5
室戸岬を西側にまわってしばらく歩いたところにある道の駅で、静岡の農園で働いているというヘンラーに会った。彼は26番金剛頂寺へ至る長い長い上り坂で、靴下を血で真っ赤に染め、片足を引きずりながら歩くヘンラーを目撃したという。
「マメが何重にもできて破裂しまくったみたいで、すっげ辛そうだった。もう民宿に2泊ぐらいして、まずは足を直すことに専念するっつってた」
よくよく聞いてみると、その血染めの男は東京の中華料理店でコックをしていて、身体は太っていて……ってホリじゃん、それ。おおっ、こんな近くまでヤツは来ていたのか。
その夜、オレは加領郷(かりょうごう)という小さな町にある大師堂(弘法大師ゆかりのお堂)の前庭で野宿した。海岸の岩場にあり、波の砕け散る音がむしろうるさかったが、そこからちょうど見える湾の反対側で花火大会がはじまり、特等席での見物とシャレこむことができた。
室戸の手前でケンちゃんと別れて2日。たぶん彼はまだ後ろにいるだろう。体操のお兄さんの仕事があるため、旅をいったん切り上げてそろそろ帰らなくてはならないと言っていたから、もう会うことはないかもしれない。連絡先ぐらい聞いておけばよかったが、ま、しょうがない。
翌朝、いつものように日の出とともに起き、荷物をまとめていると、チャリに乗った若いヘンラー、ヒデキが声をかけてきた。
「おはようございます。キンぢさんっすよね!? 一発目で会えるとはラッキーだな。ケンちゃん知ってますよね? 実はここのひとつ前の野宿スポットで昨夜一緒だったんすよ」
ヒデキはケンちゃんの連絡先を書いた納札(おさめふだ。詣でた寺に自分の名前などを書いて納める紙の短冊で、出会ったヘンロ同士が連絡先を交換するようなときも名刺代わりに使う)をオレに渡すよう託されたそうだ。オレがモヒカン頭だったため、簡単に探し出すことができたようで、ヒデキは満足していた。
「それじゃ確かに渡しましたから」
ヒデキはそう言うと、チャリで颯爽と走りだした。オレも次の場所へと移動を開始する。
尋常でなく暑い日が続いている。昨夜の花火大会を主催した町、奈半利(なはり)の小さな食堂でカキ氷を喰った。自動的にスイカ3切れが付いてくるほか、帰り際には携行食としてゆで卵と、キンキンに氷らせたPET入りのお茶までいただく。しめて100円。オセッタイ、まじ最高です。
高知のひとはやたらに気前がよく、オセッタイしてくれるひとがたくさんいる。街中ではヤクザ風の男が、反対車線を走っていたクルマをわざわざ急停車させて、「兄ちゃん、オセッタイや」とやはり氷らせたお茶をくれた。
そんな多くのサポートがあったからだろうか。この日は歩きに歩いて、歩行距離はこれまでの最長不倒43キロ超えをマーク。記録をつくりに来ているわけではないので、こんなこと自慢にはならないが、自信にはなる。すげーんだよ、オレの脚。
高知市街に入る直前に位置する夜須(やす)という街の道の駅にたどりついたときは、すでに真っ暗だった。暗闇の中に見覚えのあるテントが見える。
翌朝、目を覚ますと、テントから見たことのある男が顔を出していた。ぬぬ? ケンちゃんじゃん! 今回の旅は前日をもって切り上げ、今日四国を発つのだという。とりあえず野宿できるところを探して、夜須まで電車で来たそうだ。だいぶ後方にいた彼がここまで一気に移動してくるなんてオレは思いもしなかったし、ケンちゃんだって、まさかオレがここまで一気に歩を進めているとは思っていなかったようだ。この期に及んでのまた再会。オレらは笑った。その恐るべき濃厚なるシンクロに。
路上生活を続ける旅人たちの人生は路上で交錯する。路上にいる限り、何度も何度も交錯する。壁の内側ではけっして働くことのない、それが路上の法則だ。
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NEXT・・・・・
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